Heinemann, 1992, pp.1-257
"Whole Language for Second Language Learners "
Yvonne & David Freeman
第二言語学習者のためのホールランゲージ
イボン & デビッド フリーマン
- <概要>
- 1995年7月にアメリカのオレゴン州ポートランドで開かれた日本語イマージョン教師のためのセミナーに参加した折にも、ホールランゲージという言葉が参加教師の間から盛んに聞かれた。ケネス・グッドマンが提唱したホールランゲージの理論は、アメリカで多くの支持者を持っているが、決して国語教育のためだけのものではない。本書は、ホールランゲージの基本的な考え方と、第二言語教育に於ける様々なレベルの学習者の実践例を紹介したもので、具体的で、かつ大いに示唆に富む。
- 執筆者であるフリーマン夫妻は、序において、ホールランゲージに対する幾つかの誤解や偏見を取り上げている。ホールランゲージは、読みの導入にビッグ・ブック(大型本)を使い、process writingを用いるが、だからといって単なる「国語」ではない。教師はカリキュラムの全般に渡ってホールランゲージを実践する。また、ホールランゲージはスキルを直接教えるようなことはせず、実物教材(real literature)を使用し、本物の活動(authentic activities)に生徒たちを取り込むが、そのためホールランゲージはスキルを全く教えないという非難を被る。或いは、ホールランゲージは、一時的な流行として片付けられてしまうことさえある。
- こうした批判に対して、フリーマン夫妻は、ホールランゲージはルソー、モンテッソーリー、デューイといった先人の教育観に根差し、グッドマン、クラッシェン、カミンズなどの言語理論を背景としていることを明らかにしている。そして、ホールランゲージを信奉する教師たちは、自らの教室での実践を通じて研究を重ね、結果を他の教師や研究者と分かち合い、高い専門性を維持していると述べている。
- フリーマン夫妻は、ホールランゲージは学習者の年齢や能力に左右されることなく有効な方法であり、特にバイリンガル学習者にとっては唯一の成功の道かもしれない、とまで言う。これまで多くのバイリンガル学習者が学校で受けてきた教育には欠陥があったし、過去のデーターが指し示すように、結局、英語力は向上しなかったのである。つまり、伝統的な言語教育は、バイリンガルの生徒には効果がなかったということになるのだが、というのも、多くの教育者たちは、第二言語学習者をどう扱って良いのか分からず、ほとんど何も知らなかったので、常識的な仮説に基づいた教育がなされてきてしまったのである。 本書は、この常識的な仮説に反論する形で、ホールランゲージに関する七つの原則を立て、これを目次として、各章で実践例を交えて詳述している。七つの原則とは、次のようなものである。
- 授業は全体から部分へと進めるべきである。(第一章)
- 学習とは学習者による知識の能動的な構成であるから、授業は学習者中心であるべきである。学習とは、情報の単なる伝達ではない。(第二章)
- 授業は現在の学習者にとって、有意味で、目的のあるものでなければならない。(第三章)
- 授業は社会的なインターアクションと学習者を結び付けるものでなければならない。グループで、或いは生徒同士で学ぶことで、協力して上での大切なスキルを身につけていく。(第四章)
- 授業は話し言葉と書き言葉の両方を伸長するものでなければならない。初期の段階から読み書きを取り入れていくことは、アカデミックな能力(competence)を養うために必要である。(第五章)
- 概念を構築したり、英語の習得を容易にするためには、授業は第一言語で行われるべきである。基礎言語(primary language)の十分な発達は、英語の習得を容易にするし、第一言語や文化を知ることは、自尊心を植え付ける。(第六章)
- 学習者を信頼した授業は、学生の潜在能力(potential)を伸長する。生徒を信頼している教師は、学習者を信頼した活動(activity)を用意するものである。(第七章)
特に、第六章で触れられている原則は、これまでのイマージョン教育の在り方を考えた時、非常に興味深いのではないだろうか。フリーマン夫妻は、序文の最後で、ホールランゲージは万能薬ではないとしながらも、ホールランゲージに関する上記の原則を取り入れた授業は、生徒たちに学校生活に於けるより良い成功のチャンスを与えると自信のほどを覗かせている。
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