日本語教育58号 日本語教育学会 1986年 pp.195-202
「在日インターナショナル・スクールにおける
日本語教育−ASIJを中心に−」
長沢 房枝
- 《要旨》
- 本稿は、筆者が日本語教師としてアメリカン・スクール・イン・ジャパン(ASIJ)に勤務していた1981年秋から1983年春までの約2年間の現場からの報告である。
- ASIJはJCOS(Japan Council of Overseas School)の加盟校21校の中でも最も規模が大きく、1981年当時、幼稚園から高校までを合わせて890名の児童生徒が在籍していた。ASIJにはアメリカ国籍の者が多く、アメリカ志向の強い学校で、アメリカの大学に進学しやすいと言われている。
- 日本語のプログラム(高校)は二つあり、一つは長期或いは短期滞在型外国人子弟のためのJFL(Japanese as a Foreign Language)であり、いま一つは定住型外国人子弟及び混血児、日系人、帰国子女など日英バイリンガルの生徒のためのJNL(Japanese as Native Language)である。この二つのコースをつなぐクラスには、日本語がかなり話せるが読み書きはゼロに等しい者を対象としたIJ(Intensive Japanese)がある。
- 授業時間は1コマが45分から60分で、週に3〜5時間程度だが、週5日制を取っているので、年間90〜180時間マイナス学校行事や祝祭日でつぶれる分といった具合に、進度は遅い。クラスの人数は20名程度だが、少ないクラスは3〜4名程度ということもあり、レベル分けによって高校生のクラスに中学生が混入することもある。
- 順を追って毎年履修する生徒は少なく、文型積み上げ式というわけにはいかない。それぞれのクラスが独立している感がある。飛び級した生徒や、生徒の能力のアンバランスを埋めるために、conferenceと呼ばれる個人指導の時間が使われている。
- discipline(しつけ)の問題があって、日本語教師は4名中2名がアメリカ人であった。年の若い生徒の場合、何の説明もなく、いきなり直接法で教えたりすると、理解できず、欲求不満に陥って、反抗的になる。高校生の場合は、頭で納得させることができるが、中学生の場合は話しても通じないことが多く、アメリカ人の教師より12〜13歳ぐらいまでは上から押さえ付けて勉強させなければならないと言われた。
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