TESOL QUARTERLY,Vol.21,No.4,DECEMBER1987
VIRGINIA P.COLLIER/George Mason University
Age and Rate of Acquisition of Second Langage for Academic Purposes

《要旨》

 アメリカにおいて、渡米するまでに普通教育を受けていた1,548人の外国人児童・生徒を対象に、英語での授業において学年相応になるまでにどのくらいの時間がかかるかということを調査した研究である。

 被験児達の、アメリカにやって来たときの年令や英語の能力、母語での読み書きや数学の力、英語教育の年数等はまちまちであり、又、第2言語である英語とその他の教科の達成度については、読み・国語・数学・理科・社会科からなるScience Research Associates Testの成績によって測定された結果をデ−タとして利用した。
 その結果、アメリカでの生活年数や渡米時の年令、或いは学年や教科別の達成度において特徴的なパタ−ンが見られたのである。

年令群による相違

 5〜7才、8〜11才、12〜15才等の年令群で比較したところ、8〜11才の児童が最もはやく学年相応レベルに達し、2〜5年間で全ての教科がアメリカ人児童の標準レベル以上になったということがわかった。また、5〜7才の児童は同じ期間アメリカにいても、8〜11才の児童より1〜3年間遅れて学年相応になったのである。さらに、12〜15才の生徒達は最も困難であり、おそらく6〜8年間かかって学年相応になると思われる。
 何教科かは、2年間もあれば学年相応に達することが出来るのであるが、全ての教科において学年相応に達するまでには、どの年令群においても少なくとも4〜8年間はかかるということである。
 子供が幼いうちなら、外国語を覚えやすいであろうと考えている人が多いが、第2言語獲得は決して容易ではなく、実際はかなり複雑なプロセスが何年にも渡って行なわれるのである。第1言語の獲得は生まれたときから始まり、少なくとも12才までは続き、その後大人になっても新しい語彙やより巧妙な言いまわし等が獲得されていく。第2言語は、必要にせまられているかどうかという状況によってその習熟度が変わってくる。学童期に移住してきた子供たちは、どうしても学校で第2言語が必要になってくるので、数学や理科、社会科等のような教科で使用するために言語領域(音韻体系の意味論や構造、音韻論、形態論、統語論、語彙、談話、語用論、パラ言語等)と言語スキル(聞く、話す、読む、書く等の能力およびメタ言語知識)を完全にマスタ−する必要があるのである。

BICS / CALP

 Cumminsは第2言語獲得についての最初の理論的モデルでふたつのタイプがあることを述べている。個人的なコミュニケ−ション場面で使用する言葉(basic interpersonal communicative skills:BICS)と授業の時や学習する時に使用する言葉(cognitive academic language proficiency:CALP)という分類をしたのである。
 これらの頭字語化された「BICS」や「CALP」に対して問題視した研究者もいた(おそらく、もっと複雑な概念であるべきだという主張から)が、実際の日常的コミュニケ−ションの言語能力とアカデミックな場面における言語能力の違いを区別する方法としては、我々の研究分野においては多くの研究者とって、意義のある、象徴的なものとなったのである。
 Cumminsが第2言語のCALP能力を分析をして明らかになったことがある。
一般化テストによって測定した結果、第2言語のBICSをマスタ−するのには普通2年間かかるということ。又、母語での教育をあまり受けてこなかった子、全く受けてこなかった子は、第2言語のCALPがアメリカ人の標準レベルに達するまでに5〜7年間かかるということである。さらにまた、年令が高い生徒ほど、母語や第2言語における基礎的な能力が第2言語獲得に影響するという結果である。つまり、年令が高くなると、母語で学習した多くの勉強内容や概念を第2言語に翻訳していることになり、従って第2言語の獲得は年令の低い児童よりも速いのである。
 しかし、Krashen、Long、Scarcellaらの「Age and rate of attainment of the L2」では、年令の高い生徒や大人は第2言語の習得は速いが、しかしながら発音や日常会話での言いまわし等も含めて考えると、年令の高い生徒や大人達の方が不利であることがあるもので、包括的に見た場合、子供たちの方が高いレベルの第2言語を獲得することになるのである、ということが述べられている。


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