Richard-Amato,P.A+M.A Snow(eds)1992
The Malticultual Classroom-Readings for Content-Area Teachers
Jim Cummins / Ontario Institute for Studies in Education
Language Proficiency,Bilingualism,and Academic Achievement
- 《要旨》
- Jim Cumminsはここで、表面的な会話の言語能力と深い認識の必要な学問的言語能力という、ふたつの言語力のレベルの違いについて取り上げている。Cumminsによるこの考え方はL2における授業や試験にも広く応用され、関連のある教科学習においても慎重に取り入れられてきている。
- さらに図2・2によって文脈的情報の多/少や認識の要求度によるコミュニケ−ション能力における概念をわかりやすく示そうとしている。まず、文脈的情報の多/少から、学習言語能力よりも 友達同志での会話能力の方が上達が速いということが言える。これは文脈的情報の少ない学習場面よりも、向かい合った状態での会話は文脈的情報がたくさんあり、意味をくみとる為の手がかりが多いからであろう。ところで、言語教育の主なねらいは、認識力が要求され、文脈的情報が少ない時でも、正確な解釈が出来て、自由に言葉を操れるようにすることである。英語の初期段階の読み書き課題では、その子供にとって大変わかりやすい、文脈的情報の多い課題を与え(例えばその子供の体験に関連した課題等)、うまくこなせるようにしてあるが、同じ原理をL2教育にも生かせるのではないだろうか。より文脈的情報の多い課題をL2の初期段階で取り入れ、徐々により総合的な、より複雑な課題を与えていけば、文脈的情報の少ない場面においても対応できるようなL2の発達がなされるのではないだろうか。なぜなら現状のESLの初期段階の教育は、子供たちの学校以外での体験に関連のないことや英語を通して行なわれるという、文脈的情報の少ないコミュニケ−ションが強調されすぎているので、マイノリティ−言語の子供たちが英語を獲得するときにハイレベルな学習言語として上達するにはいたらないのである。
- さらにここでは、もともと学習困難や言語障害といった問題をかかえる子供たちについても言及している。これらの生徒たちの言葉や学習に関する諸問題は、文脈的情報が少なく、認識力の要求される場面で起こってきた。(e.g.,Cummins&Das,1977,1982)このような子供たちには特に意味を持った文脈的情報の多い、体験的な教育が重要なのである。
- 《概念的言語能力、理論的枠組み》
マイノリティ−言語の子供が英語を獲得するのにどれくらいかかるのかということの理論的枠組みが、母語能力と第2言語間の特徴等とともに考察され、説明されている。移住して来た子どもたちは、概して、第2言語の学習言語力が学年相応になるのに5〜7年を要するのに対し、友達同志の会話における言語力は最初の2年間以内に身につけることが出来るようである。そこで、日常会話の言語力と学習言語の能力とを区別して考える必要が出てくるのである。このふたつの側面の言語的特徴を考慮に入れなかったために、学年相応の英語力を付けるのには不十分な時期に学力を評価され、学問的能力が実際よりも過少評価されてしまう子がたくさんいたのである。
- 学年相応の学習言語力より日常会話の第2言語力を獲得するほうが速いということが、言語力と学問的発達度の関係を基に仮設を立てたそれらの特徴から、明白な事実として言える。会話場面においては、コミュニケ−ション等で、文脈的情報のサポ−トが大きな役割を果たしているので学習場面ほど、第2言語そのものの正確な文法的知識が必要とされないからである。
- また図2・3では、文脈的情報や認識的要求が少ないL1とL2は相互に依存し、「共通の基礎能力」を形成していることが、多くのデ−タから判っている。このことによって、少数言語であるL1を媒介として教育をうけてもL2の学習内容が低くなるという結果にはならないことを示している。それどころか、特に言語障害や学習困難の子の2言語併用での伝統的カリキュラムにおける効果のほどは、教師達から疑念の声があがっているのである。
これらの研究結果はまた、学習困難児の親達に、家でも英語を使うよう強要する事がいかに間違ったアドバイスであるか、ということについても言及している。それは、「共通の基礎能力」の見地から見て無益なばかりでなく、第2言語では親子の会話が質・量共に少なくなるということで、情緒的にも認識力的にも悪影響であるということである。
- 実際に使用されているESLプログラムは多くの教師達や政策立案者達が思っているよりも考察の足りない、不十分なものであるということが「共通の基礎能力」の原理を支持するような多くのデ−タによって、明白になったのである。
- たとえその子が、能力よりも低い成績をとった原因がはっきりとわからないとされている場合でも、理論的根拠から推測できるのである。様々な社会で履行されているバイリンガルプログラムにおける学問的な成果(のなさ)を、確信を持って予想することが出来るのである。
- ある調査では、全面的、或いは部分的にL1で教育を受けた子達は、完全にL2で教育を受けた子と同等かそれ以上の学習効果を得ているという結果がでている。
- 学問的に危険な状態にあるマイノリティ−言語の子供たちにとって、L1の言語能力が伸びるということは、英語(L2)の実力がつくための概念発達や学習の基盤に効果的であるという証拠なのである。
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